本谷有希子の本<腑抜け>


 たまには本の感想でも。


本谷有希子の作品で、腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)です。
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 この本は昨年の授業での作品論のお題目にもなっていた本で、本棚に並んでいるのがなんとなく目にとまったので再読したという次第です。まず時間をおいて再読して感じたのは、文章ひとつひとつが芥川的に精錬されているということでした。作品論を書くわけでもなく、噛み砕くようにして時間をかけて読むと、目的があるのとはまた違った読みができるような気がしました。正しいかどうかはともかく。


 内容ですが、壊れている「家族」の日常が延々描かれています。普通の感覚ではちょっと理解が及びそうもない日常が。個人的にはこう云う小説は嫌いではありません。そして話が進むにつれてどんどんバラバラになっていく。これがまたすごい。破滅と共存が臨界点を超えてもなお同居しようとする「家族」という呪縛に恐怖します。


 ミステリーではなく、物語として刺激的な小説を求める方にオススメです。期待を裏切らない作品であると思っています。