かわいそうだね? 綿矢りさ

読みながら随所で瞬間ぞくぞくした。
 
 それは、登場人物の男が「7年付き合って別れた」過去を持つ部分であったり、三角関係の相手の女の瞳を見て「覚悟」を読み取るところであったり、煙草をふかして「うめぇー」、そして「しゃーない」という部分であったり、もう、あとからあとから、なんでこんな(自分史的にはある意味完璧な)タイミングで出版されていたのに、結構長い間、本屋で見かけては「う〜んまだいいや」と読まず嫌いしていたのだろう、という後悔と、やっぱり読まなきゃよかった、本能的に自分で避けていたんだという前者とはニュアンスの違う後悔がドロドロ湧いてくるのです。


 面白いかといえば、面白くない、という人も多いのでは?だって展開だけ追って行ったら、ただのドタバタ劇みたいで。それに狂気的な意味で言ったら、本谷由希子のほうがダーティでブラックでシュールだし。でも、そこじゃなくて、ヤバげに光っているのはむしろ細部。そんな風にびしびしと、ほとばしる感性を感じながら読むと、「ああ、またパンドラの箱を開けてしまった」と読了後に必ず思って、だから綿矢りさは困るんだ、と結局ファンでい続けてしまうわけなんです。


 あ、でも、もっと早くに読んでたら、案外顔が引きつっていたのかも?「亜美ちゃんは〜」だいぶ前に雑誌で読んでいたので、まぁ表題作だけの偏った記述になってしまったわけでした。